日本の天然林
天然林とは、「自然の力により生長していく森林」の事で、人工林に対して使われる言葉です。
鳥散布や、周囲の樹木から運ばれてきた種子によって天然更新をするため、人工林の様な同じ高さの樹木しかない単層林ではなく、多様な種類や年齢の樹木が集まってできる複層林であることが多いです。
そのため、天然林は多様性に富んだ本当の森林であると言うことができます。
現在、天然林は大きく分けて2つの意味を持ちます。
1つ目は人の手が一切入っていない原生林のことです。(原生林に関しては後述します)
2つ目は伐採などの人の手が入った後に、100年から200年ほど、人が管理をせずに天然更新によって遷移をした状態の森林のことです。
この状態の森林は、遷移の途中相にあるため、外来種や、近隣の園芸種、人工林の針葉樹などが混成しており、土地本来の樹種で構成されていない不安定な状態が長く続きます。
天然林の呼び方としては、人の手が入ってから経過した時間や、その森林の遷移状態によって、”雑木林””混成林””二次林”などと言った適当な名前をつけられることがあり、これらの呼び名の定義は曖昧ですが、どれも人の手が一度入った状態の森林を指していることに変わりはありません。
天然林の現状
国内の天然林の森林面積の約50%は戦後の大量伐採や山火事、また中途半端な宅地開発による伐採などが原因で、1度人の手の入った森林となっています。そのため遷移の時間軸が戻され、安定した状態に回復するためには何百年という年月が必要になります。
反対に、今現在人の手がほとんど入っていない原生林は約4%とほぼ残っていないのが現状です。
失われた生物多様性を元の状態に回復することは相当に困難なことであるため、貴重な自然環境を守ることが最重要課題となっています。
以上のように、
天然林とは言っても一度は人の手が入り環境が変化してしまい、完全に土地本来の生態系が形成されているわけではないのです。
もちろん天然林は人が管理していない森林の事ですから、林業などで商業利用出来る天然林というのも存在しません。
つまり途中相にある天然林とは商業利用することも出来ず、土地本来の生態系も維持できていない不安定な森林といえます。
けれどもそうした天然林は害悪しかない訳ではありません。
今現在の植生だけを見ると、
外来種を含めた新しい生態系をつくり出せているわけですし、針葉樹を含めた多種多様な植生が実現出来ているともいえます。