相談役・顧問メンバー紹介


相談役

 ふじわら  かずえ

藤原 一繪

書き

  • 日本の植生学者
  • 横浜国立大学名誉教授
  • 国際植生学会副会長
  • 国際植生学会評議員
  • 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科地球の緑再生寄付講座特任教授

 

版物

 

「9千年の森をつくろう」藤原書店 2022年(共著)

Warm temperate deciduous forests around the Northern HemisphereSpringer 2015(編著)

 

 

横浜国立大学大学院環境情報研究院・学府教授を経て、2010年横浜国立大学名誉教授。国際植生学会名誉会員。1979年学位は、理学博士(東北大学)。

 

1967年横浜国立大学教育学部生物学卒業。

1969年CNRSフランス中央研究機関給費研究員として、リール大学でテリル(ぼた山)の植生研究、西ドイツ理論・応用植物社会学研究所在外研究員として、高層湿原植生の研究を行う。1999年米国フルブライト上級研究員としてジョージア大学において生態リスク研究を行う。宮脇昭横浜国立大学名誉教授の門下で師の理論を継承し、みどりの保全・回復に精力的に取り組んでいる。世界の植生比較を基盤に、緑・環境・ひとの関係を明らかにし、土地固有の自然植生再生研究・実験をつづけている。現在の大型プロジェクトは中国・ネパール・ケニアの自然林再生を中心に、国内外の自然林再生指導、国内の環境保全林のみどり機能,災害に対する森林によるバリアー形成研究を進めている。

 

脇メソッドの国際的派生

 

1.宮脇フォレストシンポジウム(国際シンポジウム)

 宮脇フォレストシンポジウムは、2024年10月10日から14日まで、横浜国立大学(YNU)において「宮脇の森と都市林再生」に関する国際シンポジウムとして開催されました。シンポジウムでは、国連 G20グローバル・ランド・イニシアティブと鎮守の森プロジェクトを主催者として、宮脇の森が都市および環境課題に対応するための多様な可能性が紹介されました。参加者は、海外27か国から87名、日本から62名、計149名が参加しました。

 シンポジウムでは、宮脇の森の科学的基礎、宮脇の森プロジェクトの計画と実施、ネイチャー・ラボの資金調達について、シンポジウム講演、ワークショップ、ポスター講演の形式で発表していただきました。     

 シルワの川下代表は、日本伝統の和服姿で発表していただき、大変好評でした。G20ディレクターのムラレー博士から、各国伝統衣装で発表してもらえないかとの要請があったのですが、大学で行うため、民族衣装で集まるのは難しいとお答えしていたので、和服で講演いただき、日本として大変効果的でした。また講演内容も宮脇の森を教育の場として、いかに応用できるか、森の再生成果とともにお話いただき、会議の中心課題を講演していただきました。おかげで活発な討議を導くことができました。

 いずれにしても、シルワの活動成果が会議の中心課題を日本の成果として出していただき貴重な発表になりました。

  

2.『宮脇メソッドを学ぼう植樹祭』〜9000 年続く森をめぐりの森でつくろう!

 植樹祭当日はよく晴れて少し暑さを感じるくらいでしたが、めぐりの森からの心地よい風が皆さんを迎えてくれました。宮脇シンポジウムの海外の方々27か国55名に、日本人を含め総勢203名が、潜在自然植生の樹種34種類  500本を、100㎡に植樹しました。植え方の説明時に、インドのシャルマ氏が気を効かせてくれて、各国代表を植樹地に上げて紹介くださいました。

 敷き藁運びは皆さん嬉々として参加していました。マウンド上に運ぶのも手渡しで行い、藁は斜面が微妙な向きになっているため、敷き藁の向きに迷いが出たようですが皆様楽しそうに実施くださいました。また海外の方達は、自分が宮脇フォレストのスペシャリストとの思いがありシルワの説明通りとはいかず各国のやり方になってしまい、なかなか上手くいかない場面もありましたが植樹が終えた後、シルワの皆さまが植樹地を点検して、直された箇所も数か所あったとお聞きしました。ありがとうございました。

 開会式では、当該地が環境省推進『30by30』、国の保護地域以外で生物多様性保全に資する地域『OECM』の自然共生サイトの対象地として、9月27日に認定が決定したことを神奈川県政策局の中谷局長よりアナウンスいただきました。

 世界の宮脇フォレスターが日本のシルワとそのサポーターたちと一緒に植えた宮脇の森の一角が、めぐりの森にできました。

 

3.葉山小学校における葉っぴいの森活動紹介

 午前中の湘南国際村のめぐりの森での植樹祭に続き、午後海外の参加者をシルワの皆さんが案内して、葉山小学校へ移動しました。葉山小学校では、校長先生のご挨拶に続いて、プロジェクトリーダーの先生の葉っぴいの森の紹介にあり、続いて子供たちの感想紹介がありました。子供たちの感想が参加者の心に響いたようで、大変喜んでおりました。

 G20では、宮脇の森を、いかに子供たちへの教育につなげるか、ネイチャーラボ構想を練っています。葉っぴいの森は、大変良い例として紹介されました。葉っぴいの森活動は、海外の方々に大変効果が高く、ご準備ありがとうございました.

 HPに掲載されたシルワの宮脇シンポジウム・植樹祭・葉っぴいの森活動報告は、G20のムラレー博士によりまして、皆様に拡散されました。皆さん大変に感激されていました。イギリスのスティーブさんからは、「情報、インスピレーション、思い出が詰まった素晴らしいメールです。アダムも私もまだこの経験のすべてを理解しているところですが、このような尊敬すべきグループに参加し、宮脇教授の仕事を広め続ける機会を得られたことにとても感謝しています。近い将来、知識を共有し、情報を広め続けるために連絡を取り合うことになると思います。ありがとうございました。皆さん、素晴らしい一日をお過ごしください。そして、より安全な未来が訪れますように。」とのメールが寄せられました。とても素敵な時間になったことを感謝しております。

 

4.  横浜宣言(自然共生サイト登録)

以下、会議のまとめとしてつくられた横浜宣言です

 

横浜宣言:宮脇の森

 私たちは、国連砂漠化対処条約G20グローバルランドイニシアティブおよび森のプロジェクトの共催で開催された第1回宮脇の森国際シンポジウムに参加する宮脇の森の実践者および愛好家として、ここ日本の横浜に集いました。

 気候変動、急速な生物多様性の喪失、土地の劣化、急速な都市化、子どもや都市住民が自然から切り離され、自然界とのつながりが失われつつあるという差し迫った世界的な課題を認識し、生物多様性の向上、気候変動の緩和、その影響への適応、劣化した土地の回復、および人々の福祉に欠かせない貴重な生態系サービスを提供する能力を持つ宮脇の森の大きな可能性を認識し、宮脇昭教授の先駆的な森の再生手法から着想を得て、ここに以下を宣言いたします。宮脇の森は、世界的な重要解決策である宮脇の森は、地球が直面する相互に関連する課題に対処し、次世代に持続可能な未来を築くための強力なツールを提供する世界的な解決策です。

 

世界宮脇の森実践者ネットワークの構築

 私たちは、世界中の専門家が協力し、知識を共有し、推進活動を行うためのプラットフォームとして、世界宮脇の森実践者ネットワークを設立します。このネットワークは、宮脇の森の分野を進展させ、世界規模での導入を促進し、政策とガイドラインの策定に貢献します。定期的な会合や会議を開催し、コミュニティ形成、ベストプラクティスの交換、宮脇の森に関する知識の普及を図ります。また、小さな森ネットワーク、国連生態系回復の10年、社会生態学会など、同様の使命を持つ団体と協力していきます。

 

宮脇教授への敬意

 私たちは、宮脇教授の遺産を称え、その先見性あふれる業績が次世代を引き続き鼓舞し導くよう、宮脇メソッドの研究と普及に向けた取り組みを推進するよう、政府、大学、その他の機関に働きかけます。この取り組みには、宮脇の森を研究し、宮脇メソッドを教えるための研究ユニットの設立、大学における宮脇教授のチェア設立、宮脇の森研究を支援するための奨学金や資金提供が含まれる可能性があります。

 

世界的な実践者の表彰

 宮脇の森の発展と実施に貢献した個人、団体、地域社会を表彰するための年次表彰制度を設けます。この表彰は、この分野でのさらなる行動と革新を促し、奨励するものとなります。

 

アプローチの標準化

 地域や生物気候に応じたガイドラインやフレームワークを策定し、異なる生態系環境において宮脇の森が最大限の効果を発揮するように努めます。また、宮脇の森に関するガイド、ビデオ、文献をさまざまな言語に翻訳し、他の関心のある言語でも利用できるようにします。他の機関とも連携し、宮脇メソッドの実践者に向けた認証制度を確立するための取り組みも行います。

 

教育と能力開発

 政策立案者、地域社会、個人を対象に宮脇の森の利点を伝え、専門家が宮脇の森の植樹を実施できるように能力を育成する取り組みを強化します。これにより、地域社会と次世代が自らの地域環境の保護者としての役割を果たし、地球全体の回復に貢献するよう促します。オンラインおよび対面での宮脇メソッドのコースも開発し、受講者がこのトピックに関する認定と単位を取得できるようにします。

 

風景への統合

 地方自治体、市長、企業、地域社会と連携し、都市の土地再生や公園の整備に宮脇の森を導入します。これらの森を都市の風景に組み込むことで、人々と自然とのつながりを深め、より健康的な生活環境を創出します。

 

学校や大学での自然実験室の設立

 世界中の学校や大学と協力して、キャンパス内に宮脇の森を設け、教育の場、アウトドア教室、学生の憩いの場として活用します。このような自然実験室の創設に学生が関わることで、人間と自然のつながりを物理的・精神的に理解する新たな世代を育成します。

 

宮脇の森の世界的拡大の促進

 既存の宮脇の森の位置、規模、樹種構成、生態的な成果を記録した世界的なデータベースを備えた包括的なオンラインプラットフォームを設立します。このプラットフォームには、各地域の潜在自然植生データベースや、宮脇の森の植樹と普及活動を行う専門家や機関のディレクトリも含まれます。また、プロジェクト提案者と資金提供機関を結びつけるハブとしての役割も果たし、知識共有や連携、成功した宮脇の森の取り組みを世界中で再現できるようにします。

最後に、私たちは、宮脇の森を私たちの時代が直面する緊急の課題への持続可能で効果的な解決策として広く普及させ、その実施を推進するため、協力して取り組んでいくことを約束します。

 

ッセージ

 

自然林を探索しましょう。自然林を体験することで、安定した自然林がいかに環境と調和して災害を緩和しているか体感できます。そして安定した自然林内を歩くことで、森の息吹を体感できます。

 

開発で安定した森を失った為に、斜面崩壊や地滑り、津波、山火事など身の回りに災害リスクが多発しています.まずは安定した自然林を守ること、そして壊してしまった後には、何とか安定した自然林を再生しましょう。その土地に適した手法で、自然林構成種の苗木を密植、混植、ランダムに、その土地に合った土壌を再生して植栽することで、安定した自然林を15-20年間で再生できます。

 

蓄積炭素量は60年生の雑木林の倍以上です。多様な樹種の集まりが鳥類、昆虫、そして動物の棲み家になり、時間が経てば立つほど立地を安定化させます。宮脇方式の自然林再生は3年でメンテナンスがいらなくなります。

 

一人一人が、家族が、友達同士が参加して再生した自然林は、参加者の心にも森をつくることになります。

災害リスクが少ない場所で里山を再生したい場合は、雑木林であれば下草刈りを毎年行う管理や、10-15年に1度伐採する管理を行います。近年少なくなった草原を再生したい場合は毎年刈りましょう。長い間続けるメンテナンスを覚悟して里山管理を続ける必要があります。

 


 あおき まさあつ

青木 正篤

書き

  • グリーン航業株式会社 取締役
  • 国土緑化推進機構 前・常務理事

公益社団法人国土緑化推進機構で、緑の募金の普及拡大、国民参加の森林づくり、企業の森づくり、全国の幼稚園を巡回する「森の教室」などを展開

 


 

昭和51年3月東京農業大学農学部林学科卒業後、林野庁入庁、熊本営林局・飫肥営林署、林野庁林道課・治山課、前橋営林局大田原営林署長・前橋営林局企画調整室長などを経て、林野庁管理課・企画課・森林組合課課長補佐、旭川営林支局業務部長・総務部長、関東森林管理局東京分局計画第2部長、緑資源公団森林業務部長・総務部長、林野庁東北森林管理局次長(青森事務所長)などを務め、平成21年4月林野庁林業・木材産業情報分析官で退官。この間、国有林野事業、民有林行政の推進に尽力する。

 

平成21年5月から国土緑化推進機構参与、21年8月から30年8月まで常務理事として、緑の募金を通じた国民参加の森づくりの推進に努める。平成30年10月からグリーン航業株式会社取締役。

 

ッセージ

 

 わが国の森林は過去に何度も荒廃したが、時代時代に植林が行われ森林を守る努力が継続、豊かな緑を取り戻しました。地球温暖化により、極端な気象現象が世界各地で頻発しています。わが国も例外ではなく、毎年各地で台風、竜巻、集中豪雨などによる自然災害が多発、巨大地震の発生の確率も高まってきています。寺田寅彦が言ったように、「特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命の下に置かれていることを一日も忘れてはならない」のであり、常に備えをしておく必要があります。いまを生きる私たちは、先人の努力に感謝するとともに、未来の子供たちのために、安全な国土、豊かな環境を引き継ぐ責務があります。

 


顧問

 ひらの   ゆう

平野 侑

書き

  • 博士(農学)
  • 森林再生指導員3期生
  • 日本学術振興会特別研究員PD
  • 信州大学非常勤研究員

 

 

2015年4月 東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科に入学

2019年4月 同大学地域環境科学研究科林学専攻(博士前期課程)に入学

2021年4月 同大学同専攻(博士後期課程)に入学

2024年3月 東京農業大学にて博士(農学)の学位を取得。

2024年4月から信州大学理学部に研究員(日本学術振興会特別研究員PD)として着任。

 

版物

 

1.Interspecific differences in the responses of root phosphatase activities and morphology to nitrogen and phosphorus fertilization in Bornean tropical rain forests, Yu Hirano, Kanehiro Kitayama, & Nobuo Imai (2022) Ecology and Evolution, 12:1–12. https:// doi. org/ 10. 1002/ ece3. 8669

 

2.Relationship between herbivory and leaf traits in mangroves on Iriomote Island, southern Japan, Yu Hirano, Motoki Marui, Shuhei Tachikake, Taku Kato & Nobuo Imai (2023) Journal of Forest Research, DOI: 10.1080/13416979.2023.2279003

 

3.森の根のトレーニングコース開催報告:“根”について考えた3日間、牧田直樹、福澤加里部、檀浦正子、Daniel Epron、平野侑、水上知佳、蜂須賀莉子、増本泰河、黒見信輔、寺井水萌、橋本裕生、山形拓人、細井彩、小島慧、坂本小雪、諏訪竜之介(2023)根の研究(Root research)、32(4):84-89

 

4.根っこのふしぎな世界 第3巻:くらしと根っこはつながっている?(小泉光久 編)、p24-25、文研出版(2023年、分担執筆)

 

 

ッセージ

 

私は学生時代から現在に至るまで、2,3カ月及ぶ長期調査を何度も行いながらマレーシア・ボルネオ島の熱帯林に分け入り、樹木の根の特性などを調べ続けてきました。その一方、人間による伐採により荒廃した森林や広大なパームオイル畑などを現地で目の当たりにしてきました。私は、熱帯林の研究者としてこのような熱帯林の劣化と消失を食い止めていく義務があるのではないかと思いつつ、実際どうしたらよいのかわからず、悶々とした気持ちを持っていました。

 そんな中、学生時代の指導教官から紹介されたのがSilvaでした。自分は森林生態学の専門家ではあるものの植林事業や森林再生事業に携わった経験はなかったため、実際に事業に参加させてもらうことで大変勉強になりました。特にSilvaのような市民参加型の森林再生事業は、森林の炭素固定機能の向上に寄与するだけでなく、市民の人達の環境教育の場にもなっていると思います。近年はSilvaの森林再生指導員も急激に増えており、このようにSilvaの活動の輪が広がることで地球環境問題を社会全体で考えていくムーブメントが徐々に広がっていけば、少しずつ森林再生や環境保全への道が開けていくのではないかと考えています。

 

私は、森林生態学の専門家としてデータ解析の補佐や意見提供などをさせていただきながら、引き続きSilvaの事業をサポートしていきたいと思っております。また、Silvaの経験を活かして熱帯林保全をどう進めていくべきかについても考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 


理事・監事

森林再生指導員